卵の中で窒息しない工夫  ハダニの卵呼吸器

 昆虫の卵にはたいていの場合内部の胚や幼虫に酸素を供給するための構造が見られます。オウトウショウジョウバエなどでは非常に顕著なものです。ハダニは昆虫ではありませんが、ナミハダニの卵に呼吸器官があることは1971年にドイツの研究者が始めて報告しました。その後この点に興味を持つ人はほとんど居りませんでした。
 果樹で問題の大きなミカンハダニ、リンゴハダニ、カンザワハダニ等ではどうなっているのでしょうか。走査電子顕微鏡で調べた結果ではいろいろなタイプの呼吸器があることがわかりました。産卵後48時間に卵の内部から穿孔器が殻を破って突出します。この穿孔器の由来については不明な点が多いのです。胚に由来する器官でないことは孵化後の状況を見れば明らかです。卵膜由来の器官であるという説もあります。形態的には納得できますが殻を破るような機械的な力が何処から生ずるのか不思議です。穿孔器に続く微細支柱構造と、その部分が1令幼虫の気門付近に発達していることはこの器官が呼吸のためのものであることを明確に示していると思われます。生態的には卵の日令によっていろいろな外部からの影響に差があるというデ−タ−があります。48時 間後には殺剤に対する感受性が急速に高まることも知られています。
 この穿孔器官はナミハダニでは一つの卵に1対形成され、ミカンハダニ、リンゴハダニ、クワオオハダニでは赤道を中心に上下に一対、トドマツノハダニでは赤道に沿って左右に一対形成される。卵の中で発育している幼虫はその気門の部分を穿孔器官の基部に当てがった位置にいる。ミカンハダニでは赤道と平行に横になっている。これは孵化が近くなって殻を通して赤色の目が見える時期に確認できる。

ミカンハダニ卵に作られた卵気門 気門の突出の様子
気門の細部構造 卵黄膜と卵殻