植物防疫関連資材

 当協会では、植物防疫上重要な害虫の発生予察用資材の斡旋、病原の診断および免疫研究用として植物ウイルスおよび細菌診断用抗血清の実費配布を行っております。

技術情報

◆DAS-ELISA法(二重抗体サンドイッチ法)

植物ウイルスに対して検定する場合の一般例
1.準備するもの(材料)

  1. 器具
    マイクロタイタープレート(96穴),ポリ洗浄瓶(プレート洗浄用),マイクロピペット(20μl〜200μl用),マイクロチップ(20μl〜 200μl用),ラップフィルムおよびポリ容器(プレート乾燥防止用),ペーパータオル(洗浄時使用)
  2. 緩衝液・試薬および培地
    DAS-ELISA用コーティング液(IgG),DAS-ELISA用コンジュゲート液(IgG+アルカリフォスファターゼラベル)0.05M カーボネート緩衝液(pH9.6),0.02M リン酸緩衝生理食塩水液(pH7.4) [PBS],PBS+Tween 20 [PBS-T] ,10%ジエタノールアミン溶液(pH9.8),P-ニトロフェニルリン酸2ナトリウム(発色剤,粉末),1N 塩酸(pH調整用)
  3. その他
    マイクロプレートリーダー(吸光値測定用),冷蔵庫(4〜10℃,プレート保管用),恒温器(37℃常温,抗体吸着,インキュベーション用)

2.検定手順

  1. コーティング液をカーボネート緩衝液で所定濃度に希釈し,マイクロプレートの各穴に200μlずつ分注する。(コーティング処理)
  2. マイクロプレートをラップフィルム等で包み, 37℃で3時間あるいは冷温(4℃)で1晩静置する。
  3. PBS-Tを磨砕液として調整した上清を検定試料として,各2穴に200μlずつ分注する。(試料処理)
  4. ラップフィルム等で包んだマイクロプレートを37℃で2時間あるいは冷温(4℃)で1晩静置する。
  5. コンジュゲート液をPBS-Tで所定濃度に希釈し,マイクロプレートの各穴に200μlずつ分注する。(コンジュゲート処理)
  6. ラップフィルム等で包んだマイクロプレートを37℃で3〜4時間静置する。
  7. マイクロプレートをPBS-Tで4〜5回洗浄する。
  8. 10%ジエタノールアミン溶液にP-ニトロフェニルリン酸2ナトリウム(1mg/ml)を溶解する。(基質溶液)
  9. 基質溶液を200μlずつ各穴に分注する。(基質添加)
  10. 基質添加から30分〜60分後に結果判定(※)
    ※ 肉眼で発色(黄色)の有無を確認する。その時, ネガティブコントロールが無発色であり,陽性反応液が強く発色していることが条件となる。あるいはマイクロプレートリーダーで吸光度を測定してより正確な判定を行う。

植公表された主な研究報告(血清診断法)

  1. 河野敏郎・植草秀敏・津田新哉・高橋義行(2008):アイリスイエロースポットウイルス(IYSV)の抗体作製と血清診断方法の検討,日植防研報 9:1-9.
  2. 河野敏郎・高橋幸吉・高橋義行(2005):旧タバコモザイクウイルス保存株の血清学的な検証,関東病虫研報 52:13-18.
  3. 河野敏郎・高橋義行(2001):高比重ラテックス凝集反応法を用いたスイカ果実汚斑細菌病菌の簡易検出,関東病虫研報 48:37-39.
  4. Takahashi, Y., Hori, H., Furuno, H., Kawano, T., Takahashi, M. and Wada, Y. (1998) Enzyme-Linked Immunosorbent Assays for Rapid and Quantitative Detection of Insecticidal Crystal Proteins of BT Pesticides J. Pesticide Sci. 23:386-391. 
  5. 河野敏郎・高橋義行(1999):花卉類のELISA検定における非特異反応とPVPの効果,日植防研報告 8:7-11.
  6. 河野敏郎・高橋義行(1997):高比重ラテックスによる植物ウイルスの簡易検定,日植病報 63(5):403-405.
  7. 河野敏郎・小木曽秀紀・高橋義行(1996):レタス腐敗病3種細菌のELISA検定 関東病虫研報 43:75-77.
  8. 河野敏郎・高橋義行・中野正明・津田新哉・高橋幸吉(1994):RIPA法によるシンビジウムのウイルス検定 関東病虫研報 41:169-170.
  9. Takahashi, Y. and Shohara, K.(1990):Practical Detection of Wasabi Strain of Tobacco Mosaic Virus by Using "Cocktail " Monoclonal-Antibodies,Ann. Phytopath. Soc. Japan 56:621-627.
  10. Takahashi, Y., Kameya-Iwaki, M., Shohara, K. and Toriyama, S.(1989):Detection of Watermelon Strain of Cucumber Green Mottle Mosaic Virus by Using Monoclonal Antibodies,Ann. Phytopath. Soc. Japan 55:369-372.
  11. Takahashi, Y., Kameya-Iwaki, M. and Shohara, K. (1989):Characteristics of Epitopes on the Tomato Strain of Tobacco Mosaic Virus Detected by Monoclonal Antibodies,Ann. Phytopath. Soc. Japan 55:179-186.
  12. 高橋義行(1988):ELISA法−その特徴と実施上の注意点 植物防疫 42(2):22−26.
  13. 高橋義行(1988):凝集反応法−赤血球凝集反応法とラテックス凝集反応法 植物防疫 42(1):60-62.
  14. 高橋義行・匠原監一郎・柏崎 哲・土崎常男(1988):簡易ELISA法によるオオムギ縞萎縮ウイルスの検出,関東病虫研報 35:29-30.
  15. Takahashi, Y., Omura, T., Shohara, K. and Tsuchizaki, T.(1987):Rapid and Simplified ELISA for Routine Field Inspection of Rice Stripe Virus,Ann. Phytopath. Soc. Japan 53:254-257.
  16. 高橋義行・匠原監一郎・大島信行・荒木隆男(1986):抗体感作赤血球の安定性,関東病虫研報 33:40-42.
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Q&A

DAS-ELISA用セットについて,/

Q1:TSWVのエライザ検定を行っていますが、陽性と思われる試料でも、反応しません。

:検定試料を葉重量の10〜100倍希釈で使用してみてください。
 トータルIgG中、TSWVと特異的に反応する部位が限られている本TSWV抗血清では、抗原(ウイルス)量の僅かな差で反応性が弱くなりますので、濃い濃度での使用を試みて下さい。
アザミウマ伝搬性のウイルスに共通する現象ですので、INSV、MYSV、IYSVで同じようなことがある場合に有効な手段です。検定試料の濃度を10〜100倍にして行うことが必要です。また他の理由として、検定試料とした部位によっては極端にウイルス濃度が低い(検出限界以下)場合があります。例えば壊死しかかった試料等です。また、病徴が明瞭な試料の場合、他のウイルスの関与も疑ってみてください。

Q2:CYVV試薬を使用する際に注意すべきことはありますか?

:〕媾杜未50〜100倍に希釈したものを検定試料としてください。
 2〜4%のポリビニルピロリドン(K-30)を磨砕溶液に添加ください。
F辰縫泪疥爐鮓…蠅気譴訃豺腓六醂舛遼畉嬪榔嫦罎忙晴祝瓢澪泙箸靴0.2%メルカプトエタノールを添加してください。
マメの検定に関係しているウイルスに共通する現象ですので,BBWV、CMVで同じようなことがある場合に有効な手段です。マメは酸化しやすいため、それを防止する措置です。

Q3:ジャガイモYウイルス用DAS-ELISA用セットを使用しています。本試薬はPVY-T、PVY-Oともに反応しますか

:本試薬に用いた抗体はPVY-T(えそ系)を元に作製いたしました。この抗体はPVY-TとPVY-O(普通系)  ともに反応しますが、反応の程度が異なります。PVY-Tを100%とするとPVY-Oの反応性は50〜60%程度です。
このようなことから、PVY-TとPVY-Oの識別は本試薬ではできません。
逆にPVY-Oで作製した抗体の中には、PVY-Tはほとんど反応しないものがあります。

Q4:LSV(ユリ潜在ウイルス)DAS-ELISA用セットの反応性について教えて下さい。

:本試薬は、当時(西暦2000年以前)、沖永良部島のユリ栽培農家で発生し、発生圃場から持ち込まれた試 料で抗血清が作製されています。電子顕微鏡および接種試験で確認して、LSVと同定していましたが、後になってLMoVの感染も疑う余地がでてきてしまいました。ほとんどがLSVなので、LMoVに反応しても極弱い反応で判定に支障をきたすことはないと考えます。
LSV抗血清の早急な作製により、現場の緊急対策に本抗血清が活躍した経緯があります。
上記の経緯から、本試薬はLSVの他にLily mottle virus(LMoV)に極弱く反応する可能性があります。

Q5:反応していけないウェル(穴)またはネガティブコントロールが発色しているのですが。

:まずは洗浄不足、不適当なプレート(細胞培養用、表面を特別に加工した吸着性の高いもの、長期保存に よる表面の劣化)および基質の劣化が考えられます。
 次に非特異的な反応を示している場合があります。非特異反応とは反応対象となる抗原にコンジュゲート抗体がつくのではなく、関係ない物質(成分)にコンジュゲート抗体がくっついてしまうことで、あたかも陽性反応を示しているようにみえるものです。コンジュゲート液の酵素を吸着するような物質を含む検定試料(例えばポリフェノールや多糖類)、酸化しやすい検定試料では磨砕溶液にその作用を軽減するような添加物(例えば2〜4%ポリビニルピロリドン、0.2%メルカプトエタノール、1%アスコルビン酸ナトリウム等)を適宜加える必要があります。また、コーティング処理または試料処理時にスキムミルクや牛アルブミン等を添加し、ブロッキングする方法もあります。但し、ブロッキングすると反応が抑制される場合があるので、適当な添加剤の濃度を探る必要があります。

Q6:アシドボラックスアベナエシトルリィのElisa試薬を使用していて、類縁菌に誤反応する可能性があるかどうか?

: 当協会のA. avenae subsp. citrulliに対する抗血清は属内の共通抗原である鞭毛(いわゆるH抗原)はで きるだけ取り除いて、特異性の高い細菌の細胞壁(いわゆるO抗原)に対して作製していますが、属内での多少の交差反応は避けられないのが現状です。
ウリ科に発生する細菌Pseudomonas syringae pv.lachrymansおよびXanthonsa campestris pv.cucurbitaeの反応は陰性として確認し、ウリ科に発生している病斑部位の検定には問題ないとして、配布しております。
 参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ktpps1999/2001/48/2001_48_37/_pdf
 同属の反応例としては(植物防疫、2011、65巻、第10号を参照ください)、A. avenae subsp. avenaeの1分離株に反応するという事例があります。
PCRによる診断が主流になった現在では抗血清は簡易診断のツールとすることが望ましいです。

ラテックス凝集反応法

Q7:ヒメトビウンカの虫体をラテックス液(50ml)を使用し検定する場合、どの程度の 大きさの試験管が適当ですか?

:ラテックス検定液50mlで実施する場合、直径(内径8mm)で高さ100mmの試験管が適当です(特注になる可能性あり)。直径(内径10ml)でも利用可能です。

Q8:ラテックス凝集反応法で大量のヒメトビウンカの検定を行うため、96穴のマイクロプレートを使用したいが、その場合の震盪方法は?

:震盪恒温器(30℃)に入れ、5〜10分程度(120回/分)で震盪するのが通常ですが、96穴のマイクロプレートの場合、振とう培養器などを利用されたほうがよいと考えます。マイクロプレートは平底だと判定に苦慮する場合があるので、U底(丸底)で透明度の高いものを奨励します。また、抗原抗体反応用の表面加工済みのものは避けてください。

Q9:検定するヒメトビウンカは殺虫剤を使用した死虫であっても問題ないか?

:殺虫剤成分がRSVを変異させる様な直接的な影響はありません。通常濃度の殺虫成分なら抗原抗体反応に 影響をおよぼすこともないと考えます。また死滅させたあとすみやかに検定するほうが良い結果が得られる場合が多いです。

Q10:虫体の冷凍保存はどの程度の期間可能ですか?

:虫体の冷凍保存は凍結温度によって変わります。0℃付近であれば解凍・凍結の温度幅が大きいので虫体 内のウイルスにも影響があり、抗体を認識する部位が壊れてしまう可能性が高くなります。一般的に-10℃以下であれば少なくとも1年間は判定結果に影響はないものと考えます。-60℃以下であればほとんど融解・解凍がないので半永久的な保存となります。

Q11:ラテックス凝集反応法のイネ罹病葉の作製について。どのくらい薄めたらいいのですか?

:罹病葉のウイルスの濃度が高いことに越したことはありませんので、罹病汁液を濃くしてしまいがちですが、葉の組織がじゃまをして、凝集塊が観察しにくくなることがよくあります。どんなに濃くとも罹病葉重量の100〜200倍希釈液が限界です。当方で行っている予備検定では葉重量の500倍液が最も高濃度です。
ユーザーが保管している罹病葉のウイルス濃度によって、適度に凝集反応する濃度を見つけることも検定作業の1つだと考えます。
100倍より濃い汁液を扱う場合には植物成分をなくすため、遠心した上澄みを利用します(1時間程度静置して、その上澄みを使うのも良いが、酸化等が進まないように冷蔵環境に置く)。

Q12:ラテックス凝集反応法のイネ罹病葉の作製について。どのくらい薄めたらいいのですか?

:ラテックス凝集反応法は検定対象が虫および罹病葉であっても生理食塩水で磨砕します。虫の検定の場合、直接虫を潰してラテックス液を加えるやり方が主流ですが、ラテックス液と等量の生理食塩水で磨砕して、等量のラテックス液を加えるユーザーもいます。また、罹病葉の場合、葉重量の100〜200倍希釈汁液を検定試料として、ラテックス液を等量加えると200〜400倍希釈液となるので診断しやすくなります。

Q13:高比重ラテックス凝集反応法で植物を対象とする場合と虫を対象とする場合で磨砕溶液のpHが違うのはなぜですか?

:磨砕溶液のpHが虫と植物で異なるのは、中性付近で凝集反応させたいので、分けています。虫の場合すりつぶすと、虫体の成分で少しアルカリ側に傾くものが多いので磨砕溶液のpHを6.0としています。

その他

Q14:購入した試薬を海外に送りたいのですが,何か問題となることがあるでしょうか。

:当協会の試薬は国内需要向けに作製しています。海外に向けて送付した際に品質が保証できません。
 海外送付用に必要な書類等の事務手続きに対応することが不可能ですので、当協会から直接送付することはできません。

Q15: 抗血清試薬を誤って凍結させてしまいました。今後の使用は可能でしょうか。

:解凍する際にどうしても内容物の結合箇所に問題を生じてしまい、品質が低下します。品質の低下は反応 性の低さを意味しますので使用不可能と思います。但し、解凍のされ方次第ではそれほど品質の低下に至っていない場合もあるので、反応性を確認していただければと考えます。その後、ご相談ください。

Q16:コンジュゲート試薬の使用濃度を取り扱い説明書よりも薄くして使用することは可能でしょうか。

:弊社の予備検定によって最適な使用濃度を提示していますので、本濃度を守っていただきたいのですが、 ユーザーの方の経験値(理解度)の上に環境条件・発色程度によっては濃度を変えて使用していただくことは可能と考えます。

Q17:購入した抗血清試薬が全部使い切らずに有効期間の6ヶ月を過ぎてしまいました。しかし,捨てるには忍びないので....

:品質は保証できませんが、ユーザーの方の判断でご使用ください。試薬の管理の仕方次第では6ヶ月すぎると急速に品質が低下する場合もございますので、ご了承ください。

Q18:販売されている抗血清試薬にSDSはありますか。

:エライザ試薬、ラテックス抗体感作試薬、高比重ラテックス抗体感作試薬はいずれも、SDS対象物質に該当しません。唯一オプション品の10%ジエタノールアミン溶液が該当しますので、ジエタノールアミン原液の購入会社のSDSシートを添付いたしております。

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